ご夫婦と二男二女の四人の子ども達が暮らす賑やかなMさん邸。希望したのは、家族のだんらんを重視した、徹底したオープン空間。もちろん「他人と同じスタイルはイヤ」と、デザインへのこだわりも譲れない。そんなMさんが選んだのが、以前から「他社にはない、ちょっと面白い家を造るな」と注目していた建築ネットワークだ。
この家の大きな特徴は、極力ドアを排除したフルオープンな間取り。LDKがひと続きになった一階に、二階は四人きょうだいが仲良く集うL型の広々ワンルーム。加えて、リビングに設けた階段や、トイレ、風呂は必ずダイニングを通るといった動線の工夫により、家のどこにいても家族の気配が感じられるのがポイントだ。オープンすぎて冬寒いのでは?という心配も問題なし。効果の高いセルロース断熱と床暖房の採用で、雪の舞う日でも家中はストーブ一台で二階までポカポカ快適なのだ。
そして、もう一点。「趣味を存分に楽しむこと」もMさん邸の重要なテーマ。Mさんの趣味はピアノに珈琲、料理と多彩であり、子ども達もピアノやサックスを習っているため、防音のピアノ室は必須の条件。二階には将来、家族で楽器を奏でるためのファミリースペースも用意した。また、キッチンの大火力ガスコンロは、奥様がパンを焼くためのオーブンを搭載。広くフラットな天板はパンをこねたり、ミルなどの珈琲用具も余裕で置ける。ここで毎朝、ゆっくり豆を挽いて珈琲を入れるのがMさんの至福の時となっている。
言うなれば、ここはいずれ巣立っていく子ども達と、今しかできないことをめいっぱい楽しめる家。子ども達がどこにいても、両親がその様子をにこやかに、時に注意しながら優しく見守っている。これがMさん邸のいつもの風景だ 。
【上】キッチン・ダイニングのペンダントシェードは、天草町にある「久窯」で特注した陶磁器製
【下】見通しのきく対面キッチンやリビング階段など、いつも家族の顔が見える間取りがポイント
家族6人分の食事を作るキッチンは、大火力のガスコンロ。パンを焼く時は据え付けのガスオーブンが大活躍
【左】子ども室には天井高を利用したロフトもあり、遊び場としてだけでなく、収納としても十分に役立っている
【右】玄関にある造作のシューズクロークは、フロストガラスの扉で明るい印象に。傘やロングブーツも収納できる
【左】グランドピアノのある音楽室は防音室になっているので、時間を気にすることなく存分に練習ができる
【右】ダークブラウンのシックな壁に白い窓枠が映える落ち着いた外観。バルコニーの下にはウッドデッキがある